フルメタル・ジャケット

狙撃兵が、われわれに的をしぼりだす。彼らの放つ一発一発が、死の言葉だ。
死がわれわれに語りかけている。死が、われわれに奇妙な秘密を語りたがって
いる。こちらは嫌っても、死のほうがこちらを好いている。ベトコンはタフな
やつらで、絶対に嘘はつかない。銃はつねに真実を語る。銃は決して”こいつは
冗談さ”とは言わない。戦争が醜悪なのは、真実が醜悪だからで、戦争そのもの
は実に真摯だ。

フルメタル・ジャケット (角川文庫)

フルメタル・ジャケット (角川文庫)

キューブリック監督の映画フルメタル・ジャケットの原作。
映画では主人公のジョーカーが一見平和主義者のように描かれてるんだけど
原作では罪のないただの農民の爺さんを撃ち殺すシーンがある。また、映画では
ベトコンの女スナイパーをラフターマンが撃つシーンがクライマックスとして
描かれてるが原作ではラフターマンはその後友軍の戦車に轢かれてあっけなく
死んでしまう。他にもベトコンがたったひとりで米軍のヘリを撃墜して米兵が
それを褒め称えるシーンやジョーカーがカウボーイにとどめを刺すシーンなど
映像化して欲しいシーンがいくつかあった。
だが全体的な評価を下すなら、これは珍しく映画が原作を上回ってる例だと思う。
その点「ハンニバル」はひどかった。結末が原作と映画で180度違うからなぁ。
つうか、フルメタル・ジャケットの見所のひとつであるハートマンの罵倒が文章だと
どうも雰囲気が出ない。