手術の前に死んでくれたら

随分間を空けた割には普通の本を読んでなかったっす。
必要に迫られて読む本とかマジック関係の本は読んでたんだけど。
で、これ。

手術の前に死んでくれたら―ボスニア戦争病院36カ月の記録

手術の前に死んでくれたら―ボスニア戦争病院36カ月の記録

「国境を駆ける医師イコマ」なんてのがヤングジャンプに連載されていたりしたけどこれはボスニア戦争の真っ只中の病院で働く医師達を描いたドキュメンタリー。
ボスニア戦争はイスラム教徒VSセルビア人(セルビア正教徒)の戦いなんだけど、舞台はセルビア人に包囲されたイスラム都市・スレブレニツァの病院。まあ想像を絶する状況で働いていて、バッテリー工場からかっぱらってきた過酸化水素を薄めて消毒液に使ったり麻酔なしで肢切断とかしてるのよ。カルテも診断は書けるが治療の欄がいつも空欄。何もできないから。これ、たった10年前の話だぜ?やっぱり薬も電気もレントゲンもなければ入院してもほぼ無駄なんだなあ。
面白いのが登場人物のイリヤズ医師で、彼はついにぶちキレて銃を手に戦闘に飛び込んでいく。
部隊の先頭にたってセルビア側に奇襲をかけたりする。これは多分医の倫理からは外れる行為なんだろうけど著者もこのイリヤズの行為を批判はしていない。むしろ、戦争を止める気のない国連や医師・医薬品を送るだけの人道支援活動に対して批判的だ。この点が本書の特徴だと思う。また一歩踏み込んで、戦場において医療従事者は完全な中立を保ち続ける事は不可能であると論じている。
ボスニアがよくわからないって人は映画「ノー・マンズ・ランド」でも観てみよう。ブラックコメディなんだが、保身のために何もしない国連軍も出てくるぞ。
http://www.bitters.co.jp/noman/
http://cinema.intercritique.com/movie.cgi?mid=9703