マッスル・モンク

  • マッスル・モンク

http://cinema.intercritique.com/movie.cgi?mid=16320
評価4。年末に字幕で放送していたから録画しておいたものを観た。これ、レンタル屋でちょっと見かけたんだけど「バカカンフー映画なんだろうなあ、まあ観なくてもいいか」と思っていた。しかし思いっきり裏切られた。いい意味で。是非観て欲しい。後半の展開は全く予測していなかった。「フロム・ダスク・ティル・ドーン」で予想外のストーリーにぶったまげたような人が予備知識なしで観ると本当に楽しめると思う。
これ、前半は本当にバカカンフー映画なんですよ。元僧侶、現ボディビルダーかつストリッパーのビッグ・ガイが主人公。彼は僧侶時代の修行で「人の背負ったカルマが見える」という能力を身に付けた。んでカルマが見えた人は近いうちに死んでしまうという法則がある。そんな彼は女刑事リー・フンイーに出会う。このリーに惚れたビッグ・ガイは何とかカルマを取り除いてやろうと、善行を積ませるために何度も事件解決を手伝ってやるんだが、どうしてもリーのカルマは消えない。

以下ネタバレ。
結局、リーは「前世で人の首をはねた」というカルマ故に首をはねられて殺されてしまう。殺された場所は、かつてビッグ・ガイが僧侶だった時代に彼の恋人が殺された山中。リーのビデオカメラにはボロボロの服を着て髪を伸ばしっぱなしにしている浮浪者のような男がリーを殺すシーンが映っていた。「こいつはかつて俺の恋人を殺し今も山に潜伏中のシュン・ゴウに違いない!二度も俺の恋人を殺しやがって!」と怒りに燃えるビッグ・ガイ。
山中に入ったビッグ・ガイはシュン・ゴウと出会う。しかしそれはシュン・ゴウではなく、変わり果てた「未来の自分」だった。山に篭もり、シュン・ゴウと水辺で出会い、シュン・ゴウを殺し、その後も山に篭もり続けリーをも殺した、5年後の自分だった。自分のドス黒い復讐心がリーを殺してしまったのか・・・。愕然とするビッグ・ガイ。怒り狂ったビッグ・ガイは5年後の自分と死闘を繰り広げ、その首を取ろうとした瞬間、全てを悟った。これは永久ループである、と。ここで自分が未来の自分を殺すと、現在の自分は山に篭もり続ける事になろう。そのうち、シュン・ゴウが現れ、彼も殺すだろう。そしてリーも現れ、彼女を殺すだろう。その後、自分と戦い殺される事になるのだ、と。
現在の主人公と未来の主人公は巨大な仏像の前に対座し、許す事でカルマの連鎖を断ち切ると決意する。ビッグ・ガイはかつて自分が還俗した時に山に脱ぎ捨てたボロボロの法衣を拾い上げ、それを再び身に纏った。そして山で暮らすうちに、水辺にシュン・ゴウが現れる。
シュン・ゴウ「いまはいつだ?」
ビッグ・ガイ「2008年7月だ」
シュン・ゴウ「10年も・・・」
すでに悟っているビッグ・ガイは、今度はシュン・ゴウを殺さない。許されたシュン・ゴウもまたカルマの永久ループから抜け出し、泣き崩れる。二人は共に下山する。再び仏の道を歩むべく、すっきりした顔で山中の寺院へ向かい歩き出すビッグ・ガイの背中を映しながらフィナーレ。
「復讐の連鎖を断つにはどちらかが許すしかない」という、まあこれは綺麗事だと思うんだけど、いい映画でした。ちょっと泣いてしまったよ。もう一度観たいとすら思うし。