切腹の話

今日は出番ほとんどなし

切腹の話−日本人はなぜハラを切るか−
千葉徳爾 講談社現代新書


たまに「切腹マニア」で検索してくる人がいるから古本屋で買って読んでみた。面白い。どうやら絶版本らしいが。
奇譚クラブという雑誌で一時盛んに切腹研究が行われていたらしい。

一九六〇年代の同誌では、マゾヒズムサディズムフェティシズムなどの読者通信欄とともに、「切腹通信」の欄を設けてそれらの人々の交信の場とし、さらに切腹している男女の画をのせて批評しあうというほどの状況にあった。

自分で浅い切腹を試みた女性の体験報告は参考になる。すなわち、この女性は友人と深さをメスの刀に印をつけて、交互に相手の腹部を切りこみ、深さの差による痛みの程度、切れやすさ、出血状態などを調べたのだが、突立てる際に刀を腹壁に押し込むようにすると、表面がへこむだけで容易に突通らない。しかし、先端を皮膚面に斜めに引くように当てると、表皮が切れて突き立てるのがたやすい。また、直角に突いてもそのまま切先をはねるように動かせば突き立てられるという。また、五ミリ程度の深さに切ったのでは出血がすぐ止まるが、一センチ以上深くなると容易に止血しないけれども、痛みの点では両者ともに大差なく、苦痛というほどではないともある。

えらく学術的だ!他にも戦時中3人の同時切腹に立ち会った軍医の話など、古今の切腹実例が豊富に記されている。やはり介錯なしだと長時間死ねずに苦しむようだ。また、切腹とエロティシズムの関係については本書第7章「何が切腹にかりたてるか」に詳しい。
あと切腹とあまり関係ないけど面白かった話。

インドネシアにみられるアモックという自殺法は、日本ではきわめて稀なように思われる。ワレースの記すところに従うと、この方法は十九世紀のジャワ、セレベスなどにしばしば発生していた。自殺したい者はまず刀を抜いて村の広場や町中の人ごみの中で、誰でもかまわず通りかかった者に切りつけ、その血をあびて刀を正面に突出しながら、無二無三に突進しつつ「アモック、アモック」と連呼する。たちまち群衆が刀や棒でこの自殺志望者を打ち、切り、一瞬の間に死体と化せしめるのだという。

ものすごく迷惑な自殺法だ(;´Д`)
つうか袋叩きにして殺す群衆も群衆だが・・・