クゼとパトリック・シルベストルと三島由紀夫

真の主役はこいつ

しばさんが攻殻機動隊 2nd GIGを見ていろいろ考えたらしいから、俺も
落としたまま放置してた2nd GIGを見てみた。台詞が長ったらしくて面倒なんですよね。
スタッフによると意図的に長い台詞を詰め込んでるらしいんですけど(確か前作の
ビデオのおまけインタビューで誰かが言ってた)。
漫画の方はゆっくり読めるからいいんだけどね。んでちょっと気付いた点。

一度立ったからにはその目的を果たさずして身を引くことは許されない。
だが目的なく立てばどのような思想も容易に敗北し挫折する。
我は動機ある者。個別の十一人。

以上、攻殻機動隊 2nd GIG第5話から首相暗殺を目論むクゼの台詞。
これ、明らかにネタ元っつうか引用は三島由紀夫の行動学入門だな。

一たん鞘を抜けた以上は、物、あるいは人を斬るという目的なしには鞘には
納まることができない。その目的に向けられないで抜かれてしまった場合には、
日本刀は容易に敗北し、挫折するのである。

文春文庫版 行動学入門「行動とは何か」


ここでも引用されている。

能とは、戦国の武士達があらゆる芸事を蔑むなか唯一認めてきた芸事だ。
それは幾多の芸事の本質がすでに決定された物事を繰り返し得るという
虚像に過ぎないのに対し、能楽だけはその公演をただ一度きりのものと限定し
そこに込められる精神は現実の行動に限りなく近しいとされているからだ。

以上、クゼの台詞。

 芸能の本質は「決定的なことが繰り返され得る」というところにある。だから
それはウソなのである。千代幸四郎の一世一代の『勧進帳』といえども少なくとも
その月二十五回は繰り返された。『葉隠』の著者が芸能を蔑んだのは多分このためで
あり、武士があらゆる芸能を蔑みながら、能楽だけをみとめたのは、能楽が一回の
公演を原則として、そこへこめられる精力が、それだけ実際の行動に近い一回性に
基づいている、というところにあろう。

文春文庫版 行動学入門「行動の美」


三島先生はこの後、学生運動で抜かれた日本刀が実際に敗北した例を挙げている。
脅迫目的で抜かれてしまうと、殺傷目的で作られた日本刀とはそもそも用途が
違うんだから負けて当然って話だ。
アニオタに三島由紀夫ファンが少ないのかネットで誰も言及してないんだけど
それでは三島大先生(とスタッフ)が可哀想だから書いておこう。
わかってる人はいますよ〜って事で。
アニオタのみんなも三島読もうゼ!楽しいヨ!


9話の台詞

合田「物理的身体とは逆説的にその存在が確認されているゴーストが
実は体の変化に応じて変容するという事実を知っているか?」

草薙素子「さあ。かつて革命に自身の存在意義を見出した思想家が、それを実践してみせた事があったみたいだけど」

合田「パトリック・シルベストルか」

この辺の会話から、パトリック・シルベストル三島由紀夫だと推測される。
んでその著作を読んだクゼが上のような独り言を言ったと考えるといいんじゃ
ないだろうか。


行動学入門 (文春文庫)

行動学入門 (文春文庫)


ここまで書いてから検索したらこんなの出てきた。
http://gispki.myhome.cx/modules/bwiki/index.php?%B9%F1%B2%C8%A4%C8%B3%D7%CC%BF%A4%D8%A4%CE%BE%CA%BB%A1
http://blog.goo.ne.jp/satellitenation/e/8848a9e56aac3c1d299cc37efc72a5a0

Simone Weil(シモーヌ・ヴェイユ)がモデルではないかという話。
確かに「戦争と革命への省察−初期評論集」という本を著したらしい。
んで内容的にはどうなんだろか。シモーヌのこれ読んだ人の意見を聞きたい
ところだが。